てんぴょう : 展評

素晴らしき「誤訳」

大人、というものへの嫌悪感丸出しだったサリンジャーが91歳で亡くなった。
代表作、かつ大ベストセラー「the catcher in the rye」は発売以来世界で約6000万部売れているという。

日本ではなぜか「危険な年齢」という邦題で初刊行。
どうやら売れなかったようだが、この翻訳では・・・。

その後「ライ麦畑でつかまえて」で一気にベストセラーへ。
「つかまえる」という主人公視点でなく、ライ麦畑で遊ぶ子供たちの視点の「つかまえて」が「誤訳」とも言えるだろうが、この本に漂ういい雰囲気を全部凝縮している「名訳」ともなったと思える。

その後村上春樹の「キャッチャー・イン・ザ・ライ」という新訳も発売され、
10代以来久しぶりに読みなおし、主人公をなだめる「良き大人」である教師がホモだったというのに笑った。普通の青春小説なら、ここで軌道修正がなされるんだけどね。

晩年は、発表もせずやたら訴訟していたサリンジャー。
あの村上春樹の長い解説も拒否したサリンジャー。
嫌悪していた大人を超えて、爺になった自分にいらついてたのだろうか・・・。

ピーター・バラカンは、サリンジャーを読むのは「通過儀礼」だ、と言ってたけど
今も「ライ麦畑でつかまえて」欲しい人たちが確かに買い続けている。

では、またー

2010.01.29

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