<会期> 2021年2月27日(土)- 3月27日(土)
<会場> 小山登美夫ギャラリー
<営業時間> 11:00-19:00 日月祝休
このたび小山登美夫ギャラリーでは、倉田悟の個展「Ba/u/cker La/u/cker」(バッカー・ラッカー)を開催いたします。 作家にとって弊廊での初個展となる本展では、3mを超える大作を含む約20点のペインティングを展示いたします。
擬人化された動物や、仮面を付けた人間のクローズアップ。誰しも見たことのあるような日常の一場面。倉田悟は、自身の記憶や直観的なイメージを出発点に、独特のユーモアと物語性を湛えた絵画世界を描き出します。
作品には、人や動物、家具や車といった具象的に描かれたモチーフが頻繁に登場しますが、現実世界や特定の時代性を連想させる要素は注意深く削ぎ落とされています。個人的な題材をあえて汎用的な造形に落とし込むアプローチには、作品の自画像的な側面を「閉じた物語ではなく普遍化する」倉田の作品に対する態度が反映されています。倉田が絵を描く理由には「人はなぜ生きているのか」という根源的な問いがあり、作家は政治やテクノロジーのためではなく、「人間のための作品」を作りたいといいます。
その姿勢は人物表現にも現れており、仮面を付けた人間や擬人化された動物たちは、倉田が理想とする「最低限の要素で構成されるキャラクター表象」で鑑賞者に感情を伝える、ある種のアバターとしての役割を果たします。また肉体の生々しさを抑えた表現は、写実的に人間の肉体を再現しようとしてきた具象絵画の文脈に対する作家独自の展開でもあります。
一方で、吸い込まれるようなカラーフィールドや光と影のコントラストは、観客の想像力を深淵な物語へとかき立てます。緻密な筆致で描かれる、明暗、彩度、疎密、有機と無機、厚みと透明感。これらの対比は画面全体のバランスを構築し、風景に「呼吸感」を与えます。本展では、3つの展示スペースが色彩の与える視覚効果によって分けられており、最初に真夜中を連想させるモノクロームの作品のスペース、次に黄昏時を描いた作品のスペース、最後に再び暗く、且つ有彩色の作品のスペースと、キャンバスに写し出された光景が現実の空間に与える視覚効果を最大限に発揮しています。またそれは、死に関連する領域の移り替わり、精神状態により視覚から彩度が失われることも表されています。
夕暮れ時のブルーアワーの青が与える印象を、倉田は古語における「かなしい」という感覚と結びつけます。愛し・悲し・哀しといった多様なニュアンスを含んだこの言葉は、倉田が自身の作品に共通して求めている感覚でもあります。また作品におけるユーモアの感覚も、生きることの無価値性、無意味性の重力から解放されるために極めて重要な要素だといいます。
本展のタイトルになっている「Ba/u/cker La/u/cker」(バッカー・ラッカー)という作品の題名は、ある日作家に訪れた『顔のついた卵が落ちる』というイメージと、合わせて浮かんだ「馬鹿落下」という言葉から来ています。
TOMIO KOYAMA GALLERY (小山登美夫ギャラリー)
http://tomiokoyamagallery.com/
東京都港区六本木6-5-24 complex665 2F
tel:03-6434-7225