EXHIBITION | TOKYO
サム・フォールズ(Sam Falls)
<会期> 2026年1月24日(土)- 2月28日(土)
<会場> TOMIO KOYAMA GALLERY
<営業時間> 11:00-19:00 日月祝 & 展示替え中 休
この度小山登美夫ギャラリー六本木では、サム・フォールズ展を開催いたします。
2025年、金沢21世紀美術館、下瀬美術館、タグチアートコレクションと、日本の美術館でのグループ展参加が続いたサム・フォールズ。本展は日本での初個展となった前回に続き、弊廊での2度目の開催となり、新作ペインティング、陶器作品を発表いたします。
【サム・フォールズと作品について
−共生的: 1 物理的に密接に結びついて生きる、二つの異なる生物間の相互作用を伴うこと。
2 自然、露出、時間の中にある調和を通して、アーティスト、自然、鑑賞者を結びつける豊かな存在の循環】
サム・フォールズは、大気、植物、光、時間、そして自然の偶然性との緊密なコラボレーションを通じて、美学と環境を深く結びつける共生的な芸術アプローチを確立してきました。
フォールズは自然環境とのコラボレーションで制作を行い、主に屋外で植物や大気と向き合います。初期の絵画における死や象徴性といったテーマから、ランドアートの場所性やミニマリズムにいたる美術史にインスピレーションを受け、ペインティング、彫刻、写真という媒体をより有機的に、根源的な結びつきに導いています。
太陽や雨という自然の要素と直接向き合い作品を作ることで、フォールズは環境と共生しながら自然を親密に表現し、人は自然の中に存在していることを示すアートを創造してきました。
フォールズはキャンバスを森の地面や野原に敷き、剪定したその土地の植物をキャンバス上に配置、水に反応する顔料を作品全体に広げ、そのまま放置します。雨や雪、霧、朝露の湿気がこれらの顔料に触れると、表面に多様な動きが現れます。キャンバスは作品によって一晩から数ヶ月間放置され、その間に現れる表現は天候や環境によって刻々と変化する。このプロセスが繰り返され、季節や場所の天候と植物に依存した多重露光が生み出されるのです。
色彩は最初、変容と細部を表すイメージのために教示的に用いられ、その後、季節の色彩やその地域の植物に注意が向けられます。全体として、コンセプトと意図は決まっているものの、風で染料が舞う様子や、でこぼこの地面や斜面のキャンバスを流れる水の動きなど、多くの部分は自然の手に委ねられています。
植物が陽差しで萎れないよう夕方から作業し、雨や湿気で染色顔料が作用する夜遅くまで取り組む。その後日は昇り、作品は光を浴び乾かされる。自身の制作に関してフォールズは次のように語っています。
「たとえば、ジャッドが自然の中に街をつくったり、ハイザーが実際に都市を建設していますが、私はキャンブをするような感覚を持っています。、、、(中略)まるで『痕跡を残さない』キャンプのように、私は自然と共存し、それにインスパイアされ、協力しますが、持ち込んだものは全て持ち帰ります。」*1
フォールズが自然や時の流れと「共存の作家」になることで作品がつくられ、見る人々はその美しく抽象化された自然の存在性を体感することができる。
作品と鑑賞者の間を近づけたいと自身で作品制作を始めたフォールズが、写真の露光の原理を掘り下げ、自然、人間との関係性を織り込む制作プロセスを見出す事で、「アーティスト」「自然」「鑑賞者」の間の深い、豊かな循環を表すことができるようになったのです。
そうして、鑑賞者に新たな視点や好奇心を持って再び屋外へ出かけるよう促します。
フォールズは当初物理学を学んでいましたが、数学ではなく経験を通じて現実や世界と繋がるために、最終的にアート制作へと至りました。当初は写真を用いていましたが、クリエイティブな行為と鑑賞されるものとの間に時空間の隔たりがあることに不満を感じました。風景写真はフィルムに写し取られ、紙に現像され、ガラスのフレームに入って展示される。フォールズはカメラや写真の素材でなく、時間と露光という概念的原理のみを使うようになりました。
そこから、鑑賞者が実際に見るような素材を使って屋外で作業し、時と天気の効果による「一次資料」を創り出しました。また、カメラ・暗室・技術・プリンターといった専門的な媒介なしに自然の要素と直接向き合うことで、鑑賞者はテーマや素材(植物・時間・太陽・雨)に親しみを感じ、個人的な関係性を作品そのものに持ち込むことができる。こうしてフォールズは、アーティスト・自然・鑑賞者の間に存在する豊かな循環の様相を表現することを可能にしました。
【本展および新作について−
新たな表現への挑戦と、時間、生、死、自然、今を生きることへの醍醐味】
新作「Ikebana」シリーズは、2025年草月プラザでのノースフェイスコラボレーション展の際の、生け花作品からのインスピレーションで生まれました。陶器部分には、湿った陶土に埋め込まれた花や植物が焼き付けられ、その後、釉薬とガラスが施され、二度の焼成が行われています。草月流での経験に影響を受け、フォールズは現在、作品に花を挿す花瓶のような要素を取り入れています。これらの作品には東京の生花のアレンジメントが施される予定で、日本での展示との繋がりを表現します。生命の儚さや自然の循環を多層的に体現するだけでなく、季節ごとに変化する現地の草花を配置することで、作品自体が独自の生命を宿すのです。
「Bellows」シリーズは、作家のロサンゼルスの自庭で制作された「雨の絵画」です。大判カメラのベローズ(蛇腹)越しの光景を基に、中央のイメージは雨や天気への単一露光、その周囲が雨や再生する植物の二重露光、さらに外縁部が植物と雨への三重露光となっており、美しい被写界深度と彼の制作プロセスを視覚的に表しています。プロの写真現場から次第に姿を消しつつあるフィルム写真が、今なお持続する影響力へのオマージュも込められています。
彫刻作品「Tower of Light」は、アルミ製の I ビームにセラミックを「走らせ」たものです。セラミックの各ラインは、ロサンゼルスの公共自然保護区であるグリフィス公園のトレイルハイキングで集めた植物で構成されています。この有機的な素材とテーマは、自然体験とクリエイティブな時間・場所の両方を指し示しており、それを支える構造は、都市開発における現代建築の一般的な素材である I ビームと対比を成しています。この関係性は、幾何学的な空間に閉じ込められることが多い、私たちの有機的な身体という現代人の生活と、自然を凌駕し、ほとんどそれに立ち向かうためにしばしば用いられるミニマリズムの逆転の両方を物語っています。これらは、インテリジェントなデザインでありながら感情を欠いた、この冷たい美学を温める試みです。高さ2メートル以上のこの作品は、まるで植物自体が放つ光が上に向かって伸びているかのように、神秘的な力を放っています。
「Sun Fade」は、長期間にわたり屋外で太陽光を用いて自然染色した作品群から生まれました。コチニールやセコイアの種子(本作にあるように)など天然染料を用い、植物をキャンバスに縫い付け、春から秋にかけて屋外に放置することで制作されます。日光は色を褪せさせるが、植物は枯れた姿を保ちながら幽玄なイメージを創出しています。これは時間の経過と儚さを再び語りつつ、色彩・表現・経年変化の中に希望を宿し、抑制された色調はモノクロ写真と自然色の力強さ、表現の歴史、そして太陽光の強烈さを想起させます。
フォールズは、自身の作品に対して次のように述べています。
「私の作品における重要な要素は『メランコリー』であり、私の作品を最もよく表す言葉でしょう。それは悲しみでもダークでもありません。というよりも、時の経過を受け入れ、希望を感じる情緒的な表現で、いつも作品で取り扱いたいと思っていました。(中略)成長と衰退、それらの組み合わせが根底にあるのです。」*2
時間、生、死、自然という大きなテーマの深淵を追求しつつ、常に新たな手法に挑み表現を続けるサム・フォールズ。生きる醍醐味を感じるような最新の世界観を堪能しに、ぜひお越しください。
*1 後藤繁雄「初めての対話:インタビュー with サム・フォールズ」『THE ONE THING THAT MADE US BEAUTIFUL』アートビートパブリシャーズ、2024年
*2 サム・フォールズ インタビュー『SAM FALLS SYMBIOTIC』、THE NORTH FACE / Spiber、2025年
TOMIO KOYAMA GALLERY(小山登美夫ギャラリー)
http://tomiokoyamagallery.com/
東京都港区六本木6-5-24 complex665 2F
tel:03-6434-7225
