EXHIBITION | TOKYO
大島成己(Naruki Oshima)
「Tableau/Bibémus: with Cezanne」
<会期> 2018年1月19日(金)- 2月17日(土)
<会場> Yumiko Chiba Associates viewing room shinjuku
<営業時間> 12:00-19:00 日月祝休
2018 年 1 月 19 日(金)より、Yumiko Chiba Associates viewing room shinjuku にて、大島成己個展“Tableau/Bibémus: with Cezanne”を開催いたします。
2011 年より大島が精力的に制作しているシリーズ“haptic green”は、被写体への焦点距離を変化させて撮影した数百枚の カットをコンピューター上で格子状に繋ぎ合わせ、一枚の写真として再構成することで奇妙な風景を作り上げました。「木の 部分」を視る近い距離と、「全体の木」を視る遠い距離、遠近二つの距離感を混在させ、その両者の振幅のなかで「木」が曖 昧に現れることにより、私たちの空間認識は揺さぶられ、未知の視覚体験がもたらされます。このように、視ることを通して、固定化された意味が反復される日常世界から私たちを解放し、外の世界との新しい関係を構築することは、大島作品に通底する重要なコンセプトの一つです。
そういった作品を制作していく過程の中で、傍には常にポール・セザンヌの存在があったと大島は言います。多視点を用 いて、事物を新鮮な眼差しで捉え直しキャンバスに描いたセザンヌの絵画は、大島に大きな示唆を与えてきました。 本展では、“haptic green”シリーズの新作として、後年セザンヌが制作現場とした南仏のエクサプロバンスに赴き撮影をした 作品を展示致します。セザンヌが描いた石切場の作品と同じ構図で撮影をしたオマージュとなる作品をはじめ、独自にセザンヌを解釈し、その思考を「写真」を通じて継承できないかと検証したプロジェクトの成果を、是非ともご高覧ください。
尚、展覧会のオープニングに合わせ、同様に写真を用いてサント=ヴィクトワール山やセザンヌのアトリエを主題とした作品を制作している写真家の鈴木理策氏をゲストにお招きし、作家とのトークイベントを予定しております。合わせてご案 内致します。
■作家ステートメント
セザンヌ/感覚の写真へ
写真の一般的な在り方は、一つのパースペクティブにおいて対象世界を縮減し、記号化する。私の仕事はそのようなあり方に抗い、固定化 したパースペクティブを壊乱させるところから始まる。例えば、建物ガラスファサードの反射を被写体にした写真イメージをレイヤーに切 り分けて空間を錯綜させたり、クローズアップされた数百枚の写真を一枚に統合して、遠近の距離感を混在したりなどが挙げられる。最近 作は後者の手法によっているが、それは対象の色々なところに焦点を合わせて視線を<集中>化したり、逆にピントをぼかして視線を<拡散>化したりと、集中と拡散が混在する無数のショットによって不安定な風景を構成している。そしてその不安定さにおいて被写体の意味 文脈は後退し、色彩性、触覚性が感覚的に動き始めるニュートラルな世界を現そうとしている。
こうした世界の有り様を写真において探ってきたわけだが、実は常にセザンヌの作品が横にあった。彼の作品における、一元的なパース ペクティブではない多視点で捉えられることで起こる空間の<歪み>のようなものを写真でやり直すことができないかとずっと考えてき た。今回の個展では、こうした問題意識を表明するためにセザンヌを敢えて取り上げ、彼が後年よく描いていた、南仏エクサンプロバンス のビベミュにある石切場(Carrières de Bibémus)とその周辺を撮影し、制作している。ここはかつて採石場だったが、セザンヌがモチー フとした頃には既に使われていなかったようだ。街の中心から車で数十分程度離れたところにあり、ここから有名なサント・ヴィクトワー ル山を臨むことができる。彼のここでの作品は、直線的にカットされた岩と周辺の鬱蒼と生い茂る緑の木々とのコントラストが印象的で、 それはコラージュの切り貼りのような違和感をもたらし、空間の<歪み>をより一層強めている。視線の集中と拡散、そして多視点に関連 付けられた風景のコラージュによって石切場のシリーズは、彼の作品の中で最も私の興味を惹いている。
セザンヌのこうした捉え方は私の偏った解釈かもしれないが、誤解、誤読の大らかな展開の可能性を信じながら、今回の個展ではその捉 え方からもたらされる空間の<歪み>を写真においてどのように実現できるかが中心的になる。つまり、それは、対象を一元化し記号化してしまう一般的な写真のあり方を、セザンヌのように物を捉える実感のもとで再組織化しようとするものである。そこでは自身の仕事が、意味解釈される写真から「感覚の写真」へと向かうことを探ることとなっていく。
大島 成己
Yumiko Chiba Associates viewing room shinjuku(ユミコチバアソシエイツ)
http://www.ycassociates.co.jp/
東京都新宿区西新宿 4-32-6 パークグレース新宿#206
tel:03-6276-6731