EXHIBITION | TOKYO
ダニエル・ビュレン(Daniel Buren)
「Third Eye, situated works」
<会期> 2026年3月17日(火)- 5月9日(土)
<会場> SCAI THE BATHHOUSE
<営業時間> 12:00-18:00 日月祝休
1960年代中盤から現在に至るまで60年以上に渡る活動を展開し、コンセプチュアル・アートの地平を切り拓いてきた美術家ダニエル・ビュレン(1938年、フランス、ブローニュ=ビランクール生まれ)。従来の伝統的な美術制度へ一石を投じたDaniel Buren, Oliver Mosset, Michel Parmentier, Niele Toroniによるパリでのグループ結成(1966年)や、60年代半ばに街路空間で行われた無許可のポスタ掲示といった活動は、ビュレンの極めて批評的かつ哲学的、そして挑戦的な側面を強調しています。
「ゼロ度の絵画」と自身が名づけ、現在も発展を続ける8.7cm幅の白とカラーのストライプ柄は、パレ・ロワイヤル中庭に設置され論議を巻き起こした《Les Deux Plateaux(二つの台地)》(1985-1986年)通称「ビュレンの円柱」をはじめ、場の構造を問うサイト・スペシフィックな作品、およびパブリック・プロジェクトの基軸となり、現在も世界中で展開され続けています。ポンピドゥ・センター(国立近代美術館)での回顧展〈Le Musée qui n’existait pas(存在しない美術館)〉(2002年)、ニューヨーク、グッゲンハイム美術館にて開催されたThe Eye of the Storm(2005年)などの大規模な個展を経て、2016年には建築家フランク・ゲーリーが設計したルイ・ヴィトン財団の建物とのコラボレーションを実現(《The Observatory of the Light》2016年)。第10回日本国際美術展(別名:東京ビエンナーレ〈人間と物質展〉、1970年)より来日を重ね、日本との関わりも深いビュレンは、2007年には高松宮殿下記念世界文化賞(絵画部門)を受賞しています。ジヴェルニー印象は美術館での白紙委任状プロジェクト(2026年7月-)をはじめ、本年度も世界各国で活発な活動を展開する作家の挑戦は留まるところを知りません。
本展を構成するのは、6点に及ぶダニエル・ビュレンの新作《Prismes et mirroirs:Haut-relief(プリズムと鏡:高浮き彫り)》シリーズです。インダストリアル・カラー・パレットからランダムに選ばれた色彩が”Prisme”と作家が呼ぶ凸状の形態に塗布され、鏡面様の支持体の上に配置されています。作品が置かれる環境と作品との関わりについて考察を続ける作家は、近年「光」や「反射」といった現象により深くアプローチをしています。平面と立体の中間に位置する本作は、鏡面仕上げを施された支持体に並ぶPrismeの反射と共に、鑑賞者を含む場の要素を取り込みながら − とりわけ、正対する時の彼らの姿が決して全体像として現れない構造を可視化しつつ −、ビュレンが一貫して抱き続けるテーマである作品と環境が分かちがたく結びつき変容し続けること、また展示された作品を見ることそれ自体への批判的視点を同時に喚起しています。ビュレンが「視覚の道具」と呼び、60年代に発見して以来彼とともにあるストライプ柄が、本作においては三角のPrismeの側面に表現されています。8.7センチ幅の、白ともう一色を組み合わせたストライプ柄は、布、キャンバス、ポスターと媒体を変えながらも、決して変わることのないビュランの視覚言語であると同時に、与えられた場所ごとに無数のヴァリエーションを生み続ける、矛盾と思索に満ちた実践の軸であり続けています。in situ(その場でしか成立しない)とsitue(移動可能であること)の間を行き来しながら、作品の自律性を疑い、それが置かれる場所および環境との関わりを探求するビュレンの一貫した態度は、非個性化された彼の「視覚の道具」を用いた実践の強度とともに、特筆してしかるべきでしょう。
本展はビュレンの新作群と、SCAI THE BATHHOUSEという建築や、高い天井から差し込む自然光の移り変わりといった環境の諸要素とが共鳴し、作品と空間が相互に作用し合う構成を生み出します。半世紀以上に及ぶ実践が接続する本質的な問いかけ −「我々は何を見ているのか」− は、「変化し続ける物事の只中にある『不変の記号』」と自身が評するストライプと共に、ポスト・トゥルースの時代にある今日、より一層の自宜を得て、その真価を発揮することでしょう。
かつて日本の京都で「借景」の思想に出会い、制作の概念を深化させたダニエル・ビュレン。国際的な活動を展開する一方で、豊田市美術館の常設展示をはじめ、国内でも数々のコミッションワークを実現して来た彼の実践が、再び日本の地でその強度を問い、文脈の刷新へと挑みます。
SCAI THE BATHHOUSE(スカイザバスハウス)
https://www.scaithebathhouse.com/ja/
東京都台東区谷中 6-1-23 柏湯跡
tel:03-3821-1144
