オープニングレセプション: 2008年10月4日(土) 18:00より
高橋コレクション、山本現代、児玉画廊|東京 3スペース合同開催
児玉画廊|東京では、10月4日より11月11日まで坂川守個展「ブドウの木」を下記の通り開催する運びとなりました。
坂川は初期作品のボディービルダーやマネキンなどの人体から描く対象を変化させ、近年は子供向けの玩具などをモチーフに平面作品を制作しています。
表象の大きな変化は断続的に見られるものの、色彩の混合、形状の融解といった共通する特徴的な要素は、坂川作品の根幹部分にある生体的なモチーフへの拘りと遠からず関係しています。
例えば、初期作品に見られる筋肉や皮膚などの人体組成を思わせるようなフォルムと質感、あるいは近作において特に顕著である細菌やバクテリアの発生 / 増殖を思わせる画面構成にその片鱗を見ることができます。
初期のボディービルダーを描いた一連の作品シリーズ "cut"および"rock"では筋肉の隆起というシンプルで明快な題材と画面の強烈なインパクトに隠れがちながらも、坂川独自の視点で捉えた皮膚やその奥にある筋繊維の質感を、油彩だけでなく蝋や糊、ゴム、メディウムを使い分ける技法上の工夫によって、視覚を通じて体温や感触が伝わるような、より肉薄した表現を獲得しました。
また、アクリル絵の具で描いたモチーフの輪郭と色彩を生乾きの状態で押しつぶす作品シリーズでは、描かれる対象は依然人物ですが、オリジナルの形状はその技法によって一目ではほぼ判別できないほどに失われています。
その「押しつぶす」という行為によって得られた状態は、逆説的に「押しつぶされる」ことが可能な内容物を伴った何かが「押しつぶされた」様であることをイメージさせます。
このことが、一見正体不明ながらも何か肉感的な印象を与えている所以と言えます。
この「押しつぶす」という行為は、今回の展覧会においても主な技法として用いられています。
加えて、特に最近作においてはモデルとなるキャラクターやグッズに依拠するところではありますが、色彩の面でも極端に鮮やかな色が多用されていることで、直接的に生体的なイメージを呼び起こす要素は最早見られません。
しかしながら、マーブル状に混ぜられた色彩の成すいかにも有機的な模様からは、身体の成長あるいは微生物の増殖といった延伸性、能動的な流動性を想起させずにはおかないものがあります。
可愛らしいポップな色彩、丸みを帯びた輪郭、フラットな画面構成と同時に、他方ではシナプスか筋繊維のようにモチーフ同士を渉る線描、有機的で溶け出すような形状や質感など依然として生々しい要素が混在するアンビバレントな画面は、今回の個展においてその度合いを益々強め、坂川の独自に革新し続ける絵画表現の進行形をお楽しみ頂けることと存じます。
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