EXHIBITION | TOKYO
村越としや(Toshiya Murakoshi)
「星の果て 山に眠る舟」
<会期> 2025年12月19日(金)- 2026年1月31日(土)
<会場> Taka Ishii Gallery Photography / Film
<営業時間> 12:00-19:00 日月祝休 *冬季休廊:2025年12月27日(土)- 2026年1月6日(火)
タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー / フィルムは12月19日(金)から1月31日(土)まで、村越としやの個展「星の果て 山に眠る舟」を開催いたします。本展で展示されるのは、2011年以降、村越の地元・福島県内で継続して撮影しているシリーズの最新作です。これまでに発表された『大きな石とオオカミ』『火の粉は風に舞い上がる』『濡れた地面はやがて水たまりに変わる』『より深い静けさのために風に唱う』に続く5作目として、2019年1月から2020年12月までに撮影された作品より15点で構成されます。
2011年3月の震災と津波による原発事故は放射性物質の拡散を引き起こし、五感では知覚できない物質が確かに存在してるという事実を私たちに突きつけました。それは私たちが日常で多くの物事を見逃し、知覚し損ねていることを問い直す契機になったともいえます。
写真を術とする村越にとって、「見る」という行為は最も重要な要素の一つです。特に、以前から見続けてきた故郷・福島の風景は震災以前・以降で何が変わり、何が変わらなかったのか。それを考えるためには、外部の情報やメディアが語る「物語」といった先入観に惑わされず、ただ目の前の風景を凝視し、それらが語りかけてくるものに耳を澄ます必要があったといいます。福島で生まれ育ち以前から撮影を続けてきた作家にとって、避難区域や立ち入り制限が設けられた光景を前にしたとき、それはこの土地で写真を撮るという行為そのものの意味と覚悟を根本から問い直す痛みを伴う気づきの始まりでした。
…私にとって写真とは、「自己表現」という言葉で片付けられるものではありません。それは「今、これを見ている」という、誰にも奪うことのできない純粋な経験の事実に立ち返ること。そして私の思考や記憶とその事実が織りなす、凝縮された近くの結晶、あるいは刻印です。
それは、見えているものをより深く観察し、私の意識に立ち現れる世界の意味を知覚しようとする思考の軌跡。そして、私自身との果てしない対話の痕跡そのものなのです。
現在も福島が抱える問題の数々は、一個人の時間軸を遥かに超えています、その結末を私自身が生きて見届けることは出来ないかもしれません。
しかしこの地で生まれ育ち、写真という術を選び続ける者として、時間と光の断片が焼き付けられた一枚一枚が、忘却に抗うための楔になること信じています。
それはまるで神話で語り継がれる、どこかで静かに眠る舟のように、未来へ、そして鑑賞者一人ひとりへ、静かな問いを投げかけ続けるため、私はこの先も写真を撮り続けるのです。
2025年9月 村越としや
私たちは何を『見ようとし』、何を『見ようとしない』のか。その問いの狭間で撮影を続ける村越にとって、この問いを手放さずにいること自体が、写真を撮る動機になっています。本展の作品群もまた、土地の記憶、人々の記憶、そして「見る」行為についての省察を私たちに促します。
また本展の開催に合わせて、前作『より深い静けさのために風は唱う』の作品集がZEN FOTO GALLERYより刊行されます。
Taka Ishii Gallery Photography / Film(タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルム)
https://www.takaishiigallery.com/jp/
東京都港区六本木5-17-1 AXISビル 2F
tel:03-5575-5004
