EXHIBITION | TOKYO
鷹野隆大(Ryudai Takano)
「bodies」
<会期> 2025年5月27日(火)- 7月19日(土)
<会場> Yumiko Chiba Associates
<営業時間> 12:00-19:00 日月祝休
この度、Yumiko Chiba Associates では、鷹野隆大の個展「bodies」を開催いたします。鷹野は 2006 年に写真集『IN MY ROOM』で第三十一回木村伊兵衛写真賞を受賞以降、セクシュアリティやジェンダーに関わる写真のみならず、写真という媒体の特殊性を問い直す多様な表現を展開し、国内外で高い評価を得てきました。
本個展「bodies」では、男性の裸体を捉えた「立ち上がれキクオ」「ヒューマンボディ 1/1」「ヨコたわるラフ」の各シリーズを展示します。写真は、画家が対象を描く「写す」行為に対し、自動的かつ機械的に被写体が「写る」ものであり、撮影者の主体性はカメラという装置と一体化することで後退していきます。しかし、鷹野は「近年は『写る』のではなく、『写す』『写される』という関係性の中で問いを立てたくなるような作品が増えている。この撮影主体を意識した問いは、絵画と同様の意識で画面を見ることを意味する。言わば、写真の絵画化である」と指摘しています。
特に「ヨコたわるラフ」シリーズは、西洋絵画の伝統的な主題である横臥像に範をとったものであり、絵画との関係を強く示しています。本展では、写真と絵画の間、すなわち「写す」ことと「写る」ことの狭間で彷徨うように、写真における身体表現の中での主体の位置を再考します。
本展覧会は、Yumiko Chiba Associates による展覧会シリーズ「写真を問う」の一環として開催いたします。ぜひご高覧ください。
アーティストステートメント
多くの場合、写真において問われるのは、「何が写っているか」である。「どう写っているか」はほとんど問われないか、あるいは「何が写っているか」という問いのなかに紛れてしまうか、そのいずれかである。
この状況を同じ平面表現である絵画と比較してみる。絵画、とりわけ 19 世紀以降の絵画においては、「何が描かれているか」と「どう描かれているか」は、絵画を問うときの基本的な問いとして、ほぼ同時に発せられる。両者の違いはどこから来るのか。それを文法の面から考えてみる。
「何が写っているか」は「写る」の能動態による疑問形表現。一方、「何が描かれているか」は、「描く」の受動態による疑問形表現である。この違いが意味するのは、絵画においては描いた主体がどこかに存在することを言外に含んでいるのに対し、写真においては行為の主体である撮影者が捨象され、像(イメージ)が自立した存在となっている。極端に言えば、ある種の自然現象として自動的に像が現れたかのような表現となっている。
これは「描く」という動詞が動作の主体を要請するのに対し、「写る」という動詞には動作の主体が不要であるという、そもそもの違いを反映したものでもある。富士フイルムが発売しているレンズ付きフィルム「写るンです」は、こうした写真の特性を巧みに利用した命名と言えるだろう。
絵画において「何が描かれているか」と「どう描かれているか」がほぼ同時に問われるのは、絵画が人為によって生まれるものである以上、そこには必ず作者の意図があるはずだという意識がはたらくからである。画面を見る者は間もなく「作者はどう描いたのか」と問うようになるはずで、“描く主体”が鑑賞者の脳裏に登場するまでさほど時間はかからない。
同じことの裏返しで、写真において「どう写っているのか」という問いがなかなか前面に出てこないのは、それが人為であるという意識が希薄なため、“作為”との関連が深いこの問いが湧きにくいからである。もちろん写真においても「何が写されているのか」、「どう写されているのか」と撮影者の存在を含みながら問うことは可能である。しかしカメラという機械への依存度が高い画面であればあるほど、この問いを発することへのためらいが生まれる。おそらくここに写真と絵画の決定的な違いがある。つまり、画面とそれを生み出した主体との距離が否応なく異なるのである。こうした写真の性質には近代社会を問うひとつの契機(機械と人間の新たな共棲関係か、あるいは、自分が自分の主体であろうとする近代の病から抜け出る可能性か)が潜んでいると私自身は考えている。
ところが近年は「写る」ではなく、「写す」「写される」という関係性のなかで問いをたてたくなるような写真作品が増えている。撮影主体を意識したその問いは、すなわち絵画と同様の意識で画面を見ているということを意味する。言わば、写真の絵画化である。
ある写真作品を前にしたときに、「何が写っているか」と問うか、「何が写されているか」と問うか。言葉の上では微妙な違いだが、その内実は大きく異なる。果たして今回展示するわたしの作品はどちらの問いを鑑賞者に呼びおこすのだろう。
鷹野 隆大
Yumiko Chiba Associates (ユミコチバアソシエイツ)
http://ycassociates.co.jp/
東京都港区六本木6-4-1 六本木ヒルズ ハリウッドビューティープラザ 3F
tel:03-6276-6731
