EXHIBITION | TOKYO
鬼海弘雄(Hiroh Kikai)
「や・ちまた」
<会期> 2020年1月10日(金)- 1月26日(日)
<会場> NANZUKA
<営業時間> 11:00-19:00 日月祝休
この度、NANZUKAは、日本の写真文化の深淵が生んだ至高の肖像写真家、鬼海弘雄の個展「や・ちまた」を開催致します。本展は、当ギャラリーにとって初となる”写真家”の展覧会であり、当ギャラリーが開廊15年をかけて育んできた文脈にとって最後のミッシングピースとも呼べる特別企画展です。
鬼海は、1945年、山形県生まれ。法政大学文学部哲学科卒業後、トラック運転手、遠洋マグロ漁船乗組員、暗室マンなど様々な職業を経て写真家になることを決意。1973年より浅草で出会った人々を撮り続け、1987年『王たちの肖像:浅草寺境内』、1996年『や・ちまた:王たちの回廊』、2004年『Persona』、2019年『PERSONA 最終章』と、45年以上に渡る一連の浅草シリーズを収録した数々の作品集を発表。2004年には写真集「PERSONA」で第23回土門拳賞を受賞。これまで、「ペルソナ」(土門拳記念館、山形県、2004年)、「東京ポートレイト」(東京都写真美術館、2011年)、「Persona 最終章」(奈良市写真美術館、2019)などの個展を開催。その作品は、International Center of Photography(NY)にも収蔵されています。
鬼海作品の最も重要な点は、被写体となる人々の生き様や人間性をいかに写し撮るか、という事にあります。鬼海は1973年より浅草の浅草寺に立ち、愛用のハッセルブラッドを手に、一日の大半を通り過ぎる人を見つめ続けることで過ごしてきました。撮影する人は、1日に1人から2人。多くても3人。鬼海が何かを感じ取った人にのみに声をかけ、毎回同じ境内にある朱色の背景の壁で撮影を行います。「ポートレートは時間。その人が来た時間、これから行く時間を撮るんだよ」と語る鬼海にとって、被写体との関係性は非常に重要な意味を持ちます。鬼海がファインダーを向ける人は、無名の人々です。職人、失業者、水商売、老人、学生、主婦、ヤクザ、ないしは職業不明者。しかし、鬼海は彼・彼女らを「王」と呼び、その尊厳を捉えます。それを可能にする鬼海の誠実さ、愛情、そして好奇心、それこそが鬼海の作品の秘めた原料なのです。
学生時代に、哲学者の福田定良と出会い、「人間が生きている中で一番贅沢な遊びは、表現することだ」という教えを受けたという鬼海。「自分などは最初から写真家の世界とはかけ離れた所で、ひっそりとしぶとく自生する野性植物のように撮り続けることしか考えていない」と語る自身にとって、鬼海が撮る”ドロップアウトした”人々の姿は皆、写真家自身の分身でもあります。
鬼海は、以前に受けたインタビューで、次のように答えております。「そんなね、人なんてものは籾殻を剥いて要らないものを排除していくように研ぎ澄まされたりしないですよ。余分な経験、しなくてもいい苦労、無駄な失敗を全部丸ごと抱え込みながら続けることで「自分はこれでいい」という筋を通していくんだよ。」(salitote, interview by 多川麗津子)
本展は、特に鬼海が1996年に発表した『や・ちまた』にフォーカスを当て、これまで45年以上もの間に 1000人以上の人々を撮影してきた一連のシリーズの中から厳選した作品を発表致します。また、同時にCASE(同ビルB1Fの旧NANZUKAスペース)にて、鬼海と同じくダイアンアーバスに共鳴し、1980年から40年間に渡って大阪の新世界を徘徊して作品を撮り続けている写真家・百々俊二(どど しゅんじ)のポートレートシリーズから厳選した作品を集めた個展を開催いたします。本展は、長年当ギャラリーが密かに追い求めてきた夢の企画展であり、表現というものの根幹に突き刺さる素晴らしい機会になることと考えております。本展のオープニングレセプションは、2020年1月10日(金)18:00-20:00に開催致します。皆様のお越しを心よりお待ち申し上げております。
NANZUKA(ナンズカ)
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