EXHIBITION | TOKYO
川島秀明(Hideaki Kawashima)
「Stream」
<会期> 2024年3月23日(土)- 4月20日(土)
<会場> TOMIO KOYAMA GALLERY
<営業時間> 11:00-19:00 日月祝休
この度小山登美夫ギャラリー六本木では、川島秀明展「Stream」を開催いたします。
作家にとって弊廊での7度目の個展となる本展では、心境の変化が大いに表れた、新たな展開の新作ペインティングを発表いたします。
【川島秀明および本展に関して
ー「自分も大きな流れの『うたかた』である」ナルシシズムの葛藤からの気づきー】
川島秀明(1969-)は、活動初期から一貫して強い自意識と向き合い、さまざまな顔とそこに現れる憂いを帯びた繊細な目や表情を描いてきました。それは20代に2年間比叡山で仏教修行をした経験なども経て、その時々の感情や試行錯誤をかさね、自分の心情を象徴的に投影した、自画像に近いものでした。
しかし近年のコロナ禍や、肉親、親しいアーティストの死をきっかけに、川島は「自らの死」を意識するようになったといいます。と同時期に、友人家族の幼い子供との出会いと交流ができたことは、とても新鮮な大きな体験となりました。
ゆく人もあればくる人もある、人の存在は生命の循環という大きな流れの一部であることへの気づき。それにより「自己」への囚われから少しづつ解放され、見たもの聞いたものに素直に反応して表現するようになったのです。
本展のタイトルは鴨長明「方丈記」の冒頭の一節からの引用でもあります。
ゆく河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず。
よどみに浮かぶうたかたは、かつ消え、かつ結びて、久しくとどまりたる例(ためし)なし。
また今まで川島作品は、アクリル絵具による、薄く淡い色の巧緻なグラデーションが特徴的でした。しかし死を意識した今、絵を始めた若かりし頃の屈託の象徴である油絵具への苦手意識を昇華させ、色鮮やかな本出展作はすべて油絵具で描かれています。
【出展作に関して
―別れと新たな出会い、生と死の儚さと煌めきを映し出すー】
「Guide」(2023年)は、公園で女の子が川島の手を引き、遊びながら案内をしている様子であり、その子のママである川島の友人が撮った写真から描かれました。
その日は川島の父が亡くなって間もない頃。年老いた存在と向き合った時間が終わり、幼児と一緒にいる世界が現れたその写真は、まるで自身が未来からの使者によって黄泉の国へ導かれるようなイメージに見えたそうです。
他者が写し出したその姿を見て心が軽くなり、描き慣れない写真からの風景画の挑戦で新緑のなかの二人の存在を鮮やかに描き出しています。
「Stream」(2023年)は、近所の公園でその家族とピクニックをした際、波立つ池をながめる女の子の様子を、その子のパパが撮った写真から描いたものです。彼岸と此岸、その水面が彼女の前途を暗示しているようで、川島はそれを草葉の陰から見守っている、そんなイメージに見えたといい、まさに本展を象徴する作品となっています。
「Girls」(2024年)は、川島が見たある海外アイドルグループが、可愛いけれど不思議なほど皆同じに見えたという感覚をきっかけに描かれました。
背景にスピード感の効果線を描き入れると、「命短し恋せよ乙女」の一節が思い浮かび上がったといいます。それは黒澤明の映画「生きる」の中で、死期を悟った主人公が口ずさむ歌であり、自身の心情にピッタリ合いました。
画面の中の混じり合わない視線やそれぞれの顔同士の関係、全体にただよう髪など、10人の女の子たちがまるでひと塊りの「少女という概念」で表現されているようです。
川島は本展に際し、次のように述べています。
「作家生活を始めて20年が経ちましたが、やっと一周したという気がしています。
何かが終わり、何かが始まる感じ。
振り返ると不思議な縁を感じざるを得ず、比叡山にいた若い頃よりも信心深くなったかもしれません。
生きることの分からなさを実感しています。」
鑑賞者は川島作品を通して、若かりし頃の自意識への執着、家族の変化、死への意識と、自分とどこかで繋がる部分があるような、心揺さぶられるような感情を覚えるでしょう。新たな気持ちの煌めきを映し出す、最新の川島の世界観をご覧にぜひお越しください。
TOMIO KOYAMA GALLERY(小山登美夫ギャラリー)
http://tomiokoyamagallery.com/
東京都港区六本木6-5-24 complex665 2F
tel:03-6434-7225