安藤栄作(あんどう・えいさく)は、彫刻用に材料を購入するのではなく、間伐材や家を取り壊す際にでる廃材など、自然と手元にやってきた木材に、手斧をひたすらに振り降ろし、叩くことで作品をつくりだしていきます。
東京生まれの安藤は、自然とともに暮らす生活に憧れ、1990年福島県のいわき市に移り住みました。森の中や海辺に住まいその時に感じるままに生み出される作品は、いわきの森や海の上を吹き抜ける風、土地からの蒸気をたっぷりふくんだ雲、うさぎやいたちなどの動物の姿をかりた、いきとし生ける万物の精神です。
あらかじめ決めた形をきっちりと作り出すというより、一打一打木と語り合いながら生み出されるその荒々しいテクスチャーと有機的なフォルムは、抽象や具象の境なく、存在の根源を思わせます。安藤にとって叩くこと(作ること)は、食べることや寝る事と並ぶ日々の生活の行為であり、アーティストであることが生活に根ざした必然だからこそ、その作品は逞しくわたしたちの命を讃えます。
近年、その作品はより一層形作ることにとらわれず、勢いを増し、存在そのものへと立ち返っているように感じられます。APSの展示では、会場で描かれた壁面全面を覆うような大きなドローイングと、最新彫刻作品を展示いたします。常に変化し続ける安藤が、2010年の今このときに、APSの空間と対話し、どのような作品をつくりあげるか。みなさまと一緒に体験できればと思います。
東京都中央区銀座1-9-8 奥野ビル511号室
Tel:03-3567-4330
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